My Pets Secrets 2
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―演者の個性が、不思議を作品へと変える。ー
『My Pets Secrets 2』は、ノシタマサシ氏によるオリジナルマジック作品集です。
収録されているのは、カードマジック3作品、コインマジック5作品、そしてAppendixのコイン消失技法。カード、コイン、ハンカチ、パースといった親しみやすい道具を用いながら、定番プロットに独自の構成や演出を加えた作品が集められています。
本作の特徴は、単に現象を成立させるだけではなく、なぜその動作をするのか、観客に何を見せ、どのような時間を体験してもらうのかまで考えて組み立てられている点です。
絵札が一枚ずつ選ばれたカードを探しに行くコレクター、マジックを始めようとするたびに予定外のコインが現れる反復現象、探偵と犯人の物語で進行するセルフワーキング・トリックなど、演者の語りやキャラクターを活かせる作品を収録しています。
一方で、演出だけに依存した内容ではありません。コントロール、カウント、コインのスチールやスイッチ、ギミックの導入と処理など、奇術愛好家が手順の構造そのものを検討できる要素も豊富です。
長い期間をかけて実演と改良を重ねてきた作品が中心となっており、現象だけでなく、動作の理由付け、観客の認識、演技のテンポ、クリーンアップまで細かく解説されています。
すぐにレパートリーへ加えたい方はもちろん、既存のプロットをどのように再構成し、自分の演技へ馴染ませるかを研究したい奇術愛好家にも、読み応えのある一冊です。
●収録作品
1.Collection House Jacks
N’s Collector version α
現象
観客3名が選んだカードをデックの中へ混ぜ込みます。別にしておいた4枚のジャックは、選ばれたカードを探すため、一枚ずつ目の前から消えてデックの中へ入っていきます。
最後にジャックがデックのトップへ再び現れ、その間から3枚の選ばれたカードが一枚ずつ発見されます。
紹介
コレクター現象へ、絵札が一枚ずつ「探しに行く」という分かりやすい過程を加えた作品です。単なる消失と再出現ではなく、それぞれの消失が最終的な発見へつながるため、演技全体に一貫した流れがあります。
選ばれたカードは、デックへ差し込まれたときの順番を保ったまま現れる構成。複数のカードを扱う際に、演者が順番を取り違えにくい点も実演上の利点です。4枚のジャックが異なる見え方で減っていくため、反復現象でありながら変化をつけて見せられます。
2.Lost Collection
N’s Collector version β
現象
4枚の絵札を示して脇へ置きます。観客3名がそれぞれカードを選び、デックの中へ戻した後、カードはよく混ぜられます。
脇に置いてあった絵札をデックの上へ重ね、おまじないをかけます。絵札を広げると、その間から3枚の選ばれたカードが一枚ずつ現れます。
紹介
クライマックスが瞬間的に訪れる、シンプルなコレクターです。
選ばれたカードがデックの中へ戻され、シャッフルされたという印象を重視した構成になっています。カードを選ぶ場面にも一定の自由があり、ブレイクを保持し続けずにデックを扱えるため、演者の手つきを比較的ラフに見せられます。
とあるギャフ・カードを活用することで、複数枚の位置管理とクライマックスの準備を整理。現象後の処理も演技の流れへ組み込まれており、最終的には選ばれたカードを取り出し、道具をクリーンな状態にできます。
3.The Falling
Appearing Coins
現象
よく調べてもらったハンカチを四つ折りにし、指先で持ちます。
演者はポケットから見えない何かを取り出し、空中へ投げ込む仕草をします。少し間を置くと、何もなかったはずのハンカチの中へ、実際にコインが落ちてきます。
落ちてきたコインを取り出して見せた後、同じ動作を繰り返すと、さらにコインが出現します。
紹介
コインを取り出す準備動作そのものを、ひとつの出現現象として見せられる作品です。
ハンカチは観客に手渡して確認してもらうことができ、四つ折りにする作業も観客に行ってもらえます。コインが布の中へ落下するため、視覚だけでなく、重さや音によっても出現が伝わります。
基本的には共通した操作を繰り返す構成で、必要な枚数に応じて出現回数を調整できます。特別なギミックに依存せず、出現後のコインをそのまま次のルーティンへ使用できる点も実用的です。
4.Explanatory Coins Across
Novel Touch Coins Across
現象
3枚の銀貨が、一方の手からもう一方の手へ移動します。
ただし、演者は単にコインを移動させるのではなく、「なぜコインが移動するのか、その仕組みを特別に説明する」と宣言します。
銀貨を握ると中から銅貨が滑り落ち、拾い上げた銅貨は銀貨へ変化。次は、握った手の上へ銅貨が少しずつ現れ、それを取り上げて振ると銀貨へ変わります。
最後は観客自身がコインを握ります。演者の手に残ったコインは銅貨へ変化して消失し、観客が手を開くと、3枚すべての銀貨が集まっています。
紹介
コインズ・アクロスに、色の変化と「移動の理由を説明する」という演出を加えた多段構成です。
移動、出現、変化、消失が連続するため、単調になりやすい一枚ずつの移動に視覚的な変化を与えられます。銅貨が移動の仕組みを可視化する役割を担っており、演出と技法上の必要性が結び付いています。
最後は観客の手の中で完結するため、ルーティンの締めとしても使いやすい構成です。ダブルフェイス・コインは現象の中で自然に導入され、最終的な消失によって処理されます。
5.街の名探偵
Minimum Detective Cards
現象
7枚のカードを小さな田舎町に見立て、2枚の黒いジャックを、その町で暮らす探偵として紹介します。
観客が選んだカードは、大都市から逃げてきた犯人として田舎町の中へ潜り込みます。カードは演者だけでなく観客自身にも混ぜてもらいます。
2枚の探偵が町を調べ始めると、候補となるカードは徐々に絞り込まれていきます。最後には、2枚のジャックの間から、観客が選んだ犯人のカードが発見されます。
紹介
サンドイッチ現象とセルフワーキングの手続きを、探偵物語としてまとめた作品です。
ジャックを差し込む位置やカードを減らしていく操作に、すべて「捜査」という意味が与えられています。そのため、手続きが単なる数理操作に見えにくく、物語の進行として受け止めてもらえます。
観客自身にパケットを混ぜてもらえることに加え、途中からは完全にレギュラーな状態となるため、後半の操作を観客に行ってもらうことも可能です。
一度に犯人へ到達するのではなく、最初に容疑者を絞り込み、最後に一枚を特定する二段階構成も、物語と現象の双方を分かりやすくしています。
6.Three Coin Trick
a la six card repeat trick
現象
演者は3枚のコインを使ったお気に入りのマジック、「スリー・コイン・トリック」を始めようとします。
ところが、3枚を一枚ずつ数えて取り出したはずなのに、手の中から存在しないはずの4枚目が現れます。
余分な一枚をポケットへしまい、もう一度やり直しますが、再び4枚目が出現。今度こそ3枚しかないことを確認しても、また4枚目が現れてしまいます。
そこで演者は、あらかじめ一枚を抜いておけば最終的に3枚になると考えます。しかし、手を振ってもコインの音はせず、両手を開くと、今度はすべてのコインが消えています。
紹介
シックス・カード・リピートの構造を、コインへ置き換えたコメディタッチのルーティンです。
同じ現象が繰り返されますが、演者の反応と状況は段階的に変化します。最初は偶然、次は困惑、さらに警戒して確認した後にも再発し、最後には増える現象を避けようとした結果すべてが消える、という明確な起伏があります。
あるコインのギミックを使用しながら、外観は3枚のコインを扱うコンパクトな手順です。比較的角度にも対応しやすく、短い演技の中で雰囲気を変えたいときにも活用できます。
「3回コインを鳴らす」という手続きを前半から繰り返すことで、最後に音が完全に消える瞬間を強いクライマックスにしている点も巧妙です。
7.サンカチンク
Quickly Chink-A-Chink with International Coins
現象
銀貨、銅貨、チャイニーズコインの3枚を、テーブル上へ三角形に並べます。
両手をコインの上へかざして離すたびに、コインが別の場所へ移動し、正面の一か所へ集まっていきます。
最後の銅貨は、目に見える形で集まったコインの側へ滑らせます。ところが、その直後に元の場所へ瞬間移動。さらに間を置かず、再び集まったコインの側へ移動します。
最後には、集まった3枚を両面から確認できます。
紹介
4枚で演じることの多いチンカ・チンクを、3枚の異なるコインと三角形の配置で構成した作品です。
使用するコインの色と形が異なるため、どのコインがどこからどこへ移動したのかを把握しやすくなっています。また、集まる場所を演者の正面に設定できるため、クライマックスを見せる位置が偏りにくい点も特徴です。
手をどけると移動している基本現象に加え、実際に滑らせたコインが一瞬で戻り、再び移動する連続現象を収録。短時間の中で複数回の移動が起こりながら、見せ方に変化があります。
最後に残る3枚はすべて通常のコインで、表裏を確認して終えられます。
8.Locust
Bouncing Coins
現象
パースから銀貨2枚と銅貨1枚を取り出します。銅貨は再びパースの中へしまい、演者は銀貨2枚だけを指先に持ちます。
パースを振ると、確かに中からコインの音が聞こえます。ところが次の瞬間、銀貨2枚の間から、パースに入れたはずの銅貨が視覚的に出現します。
もう一度として、銅貨を2枚の銀貨の間へ挟み、手の中へ握ります。おまじないをかけると銅貨は消失。
銅貨が戻ったと思われるパースを開けると、中から出てくるのは銀貨2枚です。そして演者が握っていた手を開くと、そこから銅貨が現れます。
紹介
コインが手とパースの間を跳ね回るように移動し、最後には銀貨と銅貨の居場所が入れ替わる、コンパクトな多段ルーティンです。
特に、2枚の銀貨の間から銅貨が現れる場面は、異なる色のコインを使うことで出現が明確に伝わります。音によってパースの中にコインがあると思わせた後、指先で銅貨が現れるため、聴覚的な情報と視覚的な結果の食い違いが不思議さを支えます。
終盤では、銅貨がパースへ戻ったと思わせて銀貨2枚を出現させ、その後に銅貨を演者の手から示すキックバック構成。演技終了時には主要な道具を確認してもらえる状態になります。
Appendix
ダウト・バニッシュ
Doubt Vanish
現象
演者は指先のコインを左手へ握り込み、両手を口元へ近づけて息を吹きかけます。
両手を開くと、コインはどちらの手からも消えています。
紹介
ラムゼイ・サトルティの錯覚を大胆に活用したコイン消失技法です。
複雑な受け渡しを繰り返すのではなく、「コインを握って息を吹きかける」という簡潔な動作で構成されています。単独のデモンストレーションとして強調するより、ルーティンの途中でさらりと用いることで、自然な消失として機能しやすい技法です。
本書では「Explanatory Coins Across」の終盤にも使用されており、単体の技法としてだけでなく、ルーティンのクリーンアップとクライマックスを両立させる一例も確認できます。
●本書の主な魅力
『My Pets Secrets 2』には、現象だけを取り出せば広く知られているプロットも含まれています。しかし、各作品には独自の問いと回答があります。
コレクターで、選ばれたカードが本当に混ぜられたという印象をどう強めるか。コインズ・アクロスの反復に、どのような変化を加えるか。数理的な手続きを、どうすれば物語の必然として見せられるか。ギミックを、どこで導入し、どのように処理すれば演技の邪魔にならないか。
こうした細部への検討が、手順と解説の随所に盛り込まれています。
図版と文章に加え、動作と現象を確認するための演技動画も用意されており、文章だけでは捉えにくいタイミングや外観を補いながら学べます。
このような方におすすめです
・カードとコインの両方を研究したい方
・定番プロットの独自構成に関心がある方
・演技の理由付けやストーリーを重視する方
・クロースアップからサロンで使える作品を探している方
・技法だけでなく、観客の認識や演技構成まで学びたい方
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